皆でショーをつくりあげる一体感。
ゲストの笑顔や歓声も仕事の原動力になっています。
オープンキャンパスで日藝に一目ぼれ
幼少期からピアノを習い、中高時代は管弦学部に所属するなど、音楽に囲まれた生活を送ってきました。高校卒業後の進路を考えたとき、音楽のない大学生活は考えられませんでした。一方で、楽器の演奏を極めたいという気持ちはそれほど強くなく、音楽を幅広い視点から学びたいという思いがあり、進路選びに悩んでいました。音大への進学も視野に入れていましたが、卒業後の進路の選択肢が狭まることへの不安や、第一線で活躍できるのは一握りの人だけではないかという思いがあり、進学には踏み切れませんでした。

ピアノの演奏会。音楽がいつも身近にありました
そんなとき、母が音楽系の学科がある一般大学をいくつかピックアップしてくれており、その中の一つが日藝でした。高校3年の夏、母の勧めもあり、日藝のオープンキャンパスに参加しました。実際に足を運んだからこそ、日藝の魅力に触れることができ、母の勧めがなければ、この出会いはなかったかもしれないと感じています。
オープンキャンパスで目にしたのは、学生たちが生き生きと学び、自由に創作へ取り組む姿でした。学内の至るところで専門的な学びに触れることができ、その雰囲気に大きな魅力を感じ、直感的に「ここで学びたい」と思いました。
なかでも情報音楽コースは、演奏だけにとどまらない幅広い学びができることに加え、先生方による手厚いサポートや豊富な人脈を築ける環境にも惹かれました。「ここでなら音楽をさまざまな視点から学びながら、自分の可能性を広げられる」、そんな期待に胸が膨らんだことを今でもよく覚えています。
そして急遽、2カ月後に控えた総合型選抜試験に挑戦することを決めました。一般入試ではなく、総合型選抜を選んだのは、高校時代に管弦楽部で学生指揮者を務めた経験や、これまで積み重ねてきた音楽活動が、求められる学生像に通じるのではないかと考えたからです。エントリーシートでは、学生指揮者として培ったコミュニケーション力や周囲をまとめる力、文化祭で楽器演奏体験を企画し、形にした実行力や主体性に加え、幼少期から取り組んできたコンクールや作曲など、幅広い音楽経験を通して身につけた総合的な音楽力を、自分の強みとしてアピールしました。
皆で協力しながら、音楽をはじめ
いろいろなモノづくりに取り組んだ学生生活
音楽学科の同級生たちは、本当に個性豊かでした。演奏活動をしている人、プロを目指している人、音響や制作に興味がある人など、それぞれ異なるバックグラウンドや得意分野を持っていました。それでも共通していたのは、誰もが「音楽が好き」という気持ちを持っていたこと。その思いがあれば自然と受け入れてもらえる、温かい環境でした。また、入学時点でピアノが弾けなくても、楽譜が読めなくても心配はいりません。必要な知識や技術は授業で基礎から学ぶことができるため、それがハンデになることはありませんでした。

日藝100周年記念動画ではオーケストラメンバーとしてヴァイオリンを担当
制作系の実践授業は、どれも新鮮で、多くの学びがありました。中でも印象に残っているのは、自分たちでコンセプトを考え、作曲からレコーディングまでを一貫して行う授業です。グループごとにプロデューサー、作編曲、プレイヤー、レコーディング、ミキシングなどの役割を分担し、半年かけて一つの作品を完成させました。私は作編曲を担当し、自分が作った曲を初めて人に歌ってもらうという貴重な経験をしました。ほかにもCMやMVの制作など、様々な実践的な課題に取り組み、アイデアを形にしていく楽しさや、作品として完成したときの達成感は今でも強く印象に残っています。
大学3年のときには、地方の芸術祭に出展する作品を作りました。これまで学んできたことの集大成として、「世代を超えて楽しめる音楽体験をつくりたい」という思いから生まれたのが、オリジナルフットピアノ「フラワーピアノ」です。ローリングピアノを足で演奏できるようにアレンジし、鍵盤を花の形にデザインしました。制作を進める中で生まれる課題に対しては、メンバー全員で何度も意見を出し合い、検証と改善を繰り返しました。小さな子どもでも直感的に楽しめ、楽譜が読めなくても演奏できる作品を目指し、音と色を結び付けた楽譜を制作するなど、試行錯誤を重ねながら完成させました。完成したフラワーピアノでは、楽譜に沿って花びらを踏むだけで、楽譜が読めない子どもでも「聖者の行進」を演奏することができます。

楽譜が読めなくても楽しめるフラワーピアノ
ステージマネージャーという仕事との出会い
今の仕事に就くきっかけとなったのは、小学生のときに観た東京ディズニーシーの水上ショーです。ショーそのものに感動したことはもちろんですが、それ以上に、「この感動をゲストへ届けているのはどんな人たちなのだろう」と、ショーを支える裏方の仕事に興味を持つようになりました。
大学1年のとき、学内で開催された企業説明会で、オリエンタルランドの方から東京ディズニーリゾートの仕事についてお話を伺いました。その中で、ショーの運営を担う「ステージマネージャー」という職種の存在を知り、小学生の頃から漠然と憧れていた仕事が、まさにこの仕事なのだと感じました。仕事内容を知るほどにその魅力に惹かれ、「東京ディズニーリゾートのショーを通してゲストへ感動を届けたい」という思いは、憧れから目標へと変わっていきました。
日藝時代の幅広い経験に支えられています
卒業後は、オリエンタルランドに入社し、念願だったステージマネージャー職に就きました。現在は、東京ディズニーシーで公演されているショーを担当しています。ステージマネージャーの仕事は、ショーの本番運営だけではありません。出演者やキャストの勤怠管理や安全管理、公演の進行判断、リハーサルの運営など、業務は多岐にわたります。また、公演に関わるさまざまな部署と連携を取りながら、ショーが安全かつ円滑に進行するよう調整を行うことも大切な役割です。私が担当しているショーの本番は3人1組のチームで行い、それぞれが連携しながらゲストへショーを届けています。
入社前は本番運営が仕事の中心だと思っていましたが、実際には想像以上に業務の幅が広く、部署を超えた多くの人と協力しながら一つのショーをつくり上げていることを日々実感しています。

仕事現場での1枚
新規のショーの立ち上げにも携わっています。こちらはゼロから作り上げていく作業であるため、関係各所と綿密に打ち合わせを重ねながら、一つひとつ課題を整理し、形にしていきます。大枠の計画ができても、実際に現場を確認すると新たな課題が見つかることもあり、そのたびに検討を重ねながらより良い形を模索していきます。
ショーの立ち上げや運営には、本当に多くの人が関わっています。日藝で過ごした学生時代もまた、さまざまな個性や価値観を持つ仲間たちと協働しながらものづくりに取り組む日々でした。その経験を通して、自分とは異なる考え方や取り組み方を受け入れ、互いに尊重し合いながらも、自分の意見や軸を持って周囲と関わる姿勢が自然と身についたように思います。
現在の仕事でも、多くの関係者と連携しながら一つのショーをつくり上げています。立場や経験、考え方の異なる人たちと協力し、より良い方法を模索していく中で、日藝で培った柔軟性や対人力、協働する力が大いに活かされていると感じています。
また、日藝では学科の枠を越えて他学科の授業を受けられることも大きな魅力です。それぞれの分野の知識や考え方に触れられるだけでなく、学科を越えた学生同士のつながりも生まれます。今は音楽そのものよりも舞台運営に近い仕事をしていますが、私自身も演劇学科の授業を履修し、舞台づくりに関する知識を学んだほか、映画学科や美術学科の学生と一緒に作品を制作する機会があり、異なる専門性を持つ仲間と一つのものをつくり上げた経験は、自分の視野を大きく広げてくれましたし、現在の仕事でも活かされています。
日藝は、挑戦したいという気持ちに真剣に向き合ってくれる場所です。「こんなことをやってみたい」と声に出すことで、先生方は道筋のヒントをくださり、一緒に学ぶ仲間たちは新しい可能性へつなげてくれます。「教授」という肩書に、最初は距離感を感じてしまうかもしれませんが、日藝の先生方は、本当に気さくで距離が近いんです。様々なことへ興味のアンテナを張り、目標や向上心、積極性を持つと、とても充実した大学生活になると思います。多様な人たちと出会い、自分の世界を広げられることこそ、日藝ならではの魅力だと感じています。
芸術関連の職場には、日藝出身の先輩がたくさんいることも心強いです。実は、オリエンタルランドにも、日藝出身者がたくさん活躍しているんですよ。
(※職業・勤務先は、取材当時のものです)

2024年 音楽学科情報音楽コース卒
株式会社オリエンタルランド ショー運営部 ステージマネージャー